ネーションズチャンピオンシップ2026 第1節 日本27-10イタリア(7月4日・秩父宮ラグビー場)
7月4日、東京・秩父宮ラグビー場。満員2万1329人の観衆が見守る中、新設国際大会「ネーションズチャンピオンシップ」の開幕戦で、日本代表が歴史的な白星をつかんだ。世界ランキング12位の日本は同10位のイタリア代表を27-10で撃破。イタリアからの勝利は2018年6月、大分でのテストマッチ(34-17)以来、実に8年ぶりとなった。直近3連敗を喫していた相手から挙げた金星は通算成績を3勝8敗とし、来年のワールドカップ・オーストラリア大会に向けて大きな弾みとなる一戦となった。
先制したのはイタリアだった。開始5分、自陣でのトライラインドロップアウトからのカウンターアタックを素早く展開し、CTBフアン・イグナシオ・ブレックスが鋭いランでポスト際に飛び込んだ。今年のシックスネーションズで史上初めてイングランドを破り、スコットランドにも勝利するなど充実ぶりを見せていたイタリアが、下馬評通りの立ち上がりを見せた格好だった。
だが日本は動じなかった。7分、代表初キャップのSO伊藤龍之介が中盤から高いキックを蹴り込むと、これにWTB植田和磨が競り勝って相手のハンドリングエラーを誘発。地域を奪い返した日本はFW陣が執拗にフェーズを重ね、11分にキャプテンのLOワーナー・ディアンズが密集脇を割ってトライエリアに飛び込んだ。FB松永拓朗のゴールも決まり、スコアは7-7に並ぶ。勢いに乗った日本はその6分後、CTB廣瀬雄也が判断良くディフェンスラインを鋭く突いてクリーンブレイク。サポートした松永がフリーで駆け抜け、14-7と勝ち越した。試合前の会見でハットリーHC代行が、日々成長を続ける有望株として期待を寄せていた廣瀬が、まさにその言葉通りの働きを見せた瞬間だった。
25分には松永が左中間約35メートルのペナルティゴールを冷静に沈め、17-7とリードを広げる。ここでイタリアは高いキックを多用するアタックへとシフトチェンジしたが、WTB石田吉平、植田、FB松永のバックスリーが果敢に競り合い、齋藤・伊藤のハーフ団も多彩なキックで応戦。前半終盤には猛攻を受ける場面もあったが、集中力を切らさぬディフェンスでトライを許さず、イタリアにはPGでの加点を選ばせるにとどめた。17-10で前半を折り返す。
これまでの対戦では前半にリードを奪いながら、後半に入るとフィジカルで上回る相手に押し切られる展開が目立っていた日本代表。しかしこの日は最後まで主導権を渡さなかった。後半7分(通算47分)、16フェーズに及ぶ攻撃の末にFLベン・ガンターが4人のタックルをものともせずトライゾーンに飛び込み、松永のゴールも決まって24-10。後半12分にはFLリーチマイケルがピッチに送り出され、そのまま試合をコントロールし続けた。67分に松永が駄目押しのPGを沈め、最終スコアは27-10。終盤は厳しいディフェンスで幾度もターンオーバーを奪い、あと一歩のところまで4トライ目に迫ったが、ボーナスポイント獲得には届かなかった。
パワフルなボールキャリーと相手をなぎ倒すタックルで存在感を放ったガンターが、この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。試合前の会見でハットリーHC代行が、フィジカルの強さでチームを前進させる推進力になると先発起用の理由を語っていた通り、獅子奮迅の働きだった。
## 初キャップ伊藤龍之介、堂々の躍動
この日最大の収穫は、初キャップの舞台で堂々たるプレーを見せた21歳、伊藤龍之介(明治大4年)だった。エディー・ジョーンズHCから「世界有数の10番になる」と絶賛され、対戦相手イタリアのゴンサロ・ケサダHCからも「将来、日本代表の大きなスターの一人になれる」と警戒されていた逸材が、初のテストマッチでその評価に応えてみせた。フル出場で日本の3トライすべてに絡むアタックをけん引し、試合後は「今までと違ってすごく緊張した部分があったが、勝利で終われて率直にうれしい」と安堵の表情を浮かべた。「準備がすべて。不安を消して試合に臨めた」と振り返った若き司令塔は、ノーサイド直後、明大の先輩でもあるCTB廣瀬に抱きついて喜びを分かち合った。伊藤以外にもLOマイケル・ストーバーグ、PR大塚壮二郎らが初キャップを刻み、若手の躍動が随所で光った一戦でもあった。
## 若さと経験が融合したチーム
後半に投入されたリーチは代表キャップを93に伸ばし、大野均の持つ日本歴代最多記録(98キャップ)、そして前人未踏の100キャップに着実に近づいている。試合後は「日本のファンに勝利を見せられたことがよかった。超速ラグビーの土台もできて、形になってきた」と目を細めた。試合をコントロールしたディアンズ主将も、相手ボールのラインアウトを奪うなど攻守にわたってFW陣を牽引。試合前の会見でハットリーHC代行が、異なる環境での半年の経験を通じてかつてないほど成熟したと評していた通りの、落ち着いたキャプテンシーだった。
データにも日本の完成度は表れている。ターンオーバーロストはわずか7回にとどまったのに対し、イタリアは実に26回。イタリアの敵陣22m侵入もわずか5回に終わり、トライも1つのみ。規律あるディフェンスが、格上の勢いを最後まで封じ込めた。
なお、この一戦にエディー・ジョーンズHCの姿はなかった。4月のU23日本代表オーストラリア遠征中にマッチオフィシャルへの不適切な発言が問題視され、日本ラグビー協会から4試合の出場停止処分を受けていたためだ。指揮を託されたハットリーHC代行は試合前の会見で、選手たち自身の主体的な判断を尊重したいという方針を語っており、その言葉通りに勝利を導いた。試合前日にはジョーンズHCの母親が急逝したとの知らせも届き、選手たちは追悼の意を込めて喪章を着けてこの一戦に臨んでいた。
2年に一度開催されるネーションズチャンピオンシップに南半球グループの招待国として参戦する日本代表。次戦は7月11日、オーストラリア・ニューキャッスルのマクドナルド・ジョーンズ・スタジアムで世界ランキング3位のアイルランド代表と対戦し、18日には東京・国立競技場(MUFGスタジアム)で同4位のフランス代表を迎え撃つ。格上との連戦はなお続くが、この日示した「共に超速」の完成度は、来年のワールドカップ・オーストラリア大会に向けた確かな手応えとなった。
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