日本代表、8年ぶりにイタリア撃破 27-10

ネーションズチャンピオンシップ2026 

第1節 日本27-10イタリア (7月4日・秩父宮ラグビー場)

7月4日、東京・秩父宮ラグビー場。満員2万1329人の観衆が見守る中、新設国際大会「ネーションズチャンピオンシップ」の開幕戦で、日本代表が歴史的な白星をつかんだ。世界ランキング12位の日本は同10位のイタリア代表を27-10で撃破。イタリアからの勝利は2018年6月以来、実に8年ぶりとなった。試合後、敗れたイタリア代表の指揮官・選手が異口同音に日本の出来栄えを認めたことが、この一戦の価値の高さを何より雄弁に物語っていた。

先制したのはイタリアだった。前半4分、CTBフアン・イグナシオ・ブレックスが鋭いブレイクでトライを奪う。しかし日本は動じず、11分にキャプテンのLOワーナー・ディアンズが密集脇を突いてトライ、FB松永拓朗のゴールで7-7に追いつく。17分にはCTB廣瀬雄也のラインブレイクから松永が駆け抜けて逆転に成功した。25分の松永のPGで17-7とし、前半終盤の猛攻もしのいで17-10で折り返す。後半も主導権を渡さず、7分にFLベン・ガンターが16フェーズに及ぶ攻撃の末にトライを奪って24-10。67分に松永が駄目押しのPGを沈め、27-10で試合を締めくくった。獅子奮迅の活躍を見せたガンターがプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されている。


敵将ケサダHCも脱帽「日本が我々よりずっと良い準備をしていた」

試合後の記者会見に臨んだイタリア代表のゴンサロ・ケサダHCは、開口一番「日本代表におめでとうと言いたい」と潔く敗戦を認めた。「ボールを奪われたのは25回ほど。逆に日本からボールを奪えたのはわずか7回だった」と自軍のミスの多さを率直に振り返り、「敵陣22mまで8回攻め込みながら得点を奪いきれなかった」ことも反省点に挙げた。この数字は日本の専門メディアが試合後に示した分析(ターンオーバーロスト:日本7回、イタリア26回)ともほぼ一致しており、この日の日本の規律あるディフェンスの精度の高さを裏付ける格好となった。来日後わずか3、4回の全体練習しか積めなかった準備期間の短さにも触れつつ、「言い訳にはしたくない」と断った上で、「日本が我々よりずっと良い準備をしていた」と素直に脱帽した。キャプテンのミケーレ・ラマロも「試合を通じて主導権を握っていたのは日本だった。ボールをキープする力でも、プレッシャーをかける力でも、日本が上回っていた」と振り返っている。


この試合は出場停止処分中のジョーンズHCに代わり指揮を託されたニール・ハットリーHC代行が、堅守の理由を明かしている。「ディフェンスコーチのギャリー・ゴールドが情熱的なアプローチで、アグレッシブな姿勢でディフェンスをするようコーチングしてくれた」とし、「ターンオーバーを多く生み出せたし、我々の強みであるトランジションもしっかり出せた」とマオリ・オールブラックス戦前から積み重ねてきた守備強化の成果を強調した。


「彼の持ち味がしっかり出ていた」― 伊藤龍之介、敵将も舌を巻く

試合前からジョーンズHCに「世界有数の10番になる」と、対戦相手のケサダHCからも「将来、日本代表の大きなスターの一人になれる」と警戒されていた初キャップの伊藤龍之介(21、明治大4年)は、その評価に応える働きを見せた。ケサダHCは会見で「今日の試合の鍵になると思っていた選手が2人いた」と明かし、フランスの国内リーグ決勝を戦った1週間後に合流したSH齋藤直人ともう一人、伊藤の名を挙げた。「彼が見せたプレーは素晴らしかったし、本人の持ち味もしっかり出ていた。スピード、スペースの見極め、そしてキッキングゲームに対するセンス、すごく興味深い選手だ」と、対戦したからこそわかる具体的な言葉で若き司令塔を称賛した。ハットリーHC代行も伊藤と齋藤直人のキックとランのバランスを評価し、「9番10番からのキックで、4、5回はボールを再獲得したりスクラムに持ち込むことができた。最終的にグラウンドで実行するのは選手たちで、彼らは本当に素晴らしい仕事をしてくれた」と若きハーフ団を称えている。フル出場で日本の3トライすべてに絡むアタックをけん引した伊藤本人は、試合後「今までと違ってすごく緊張した部分があったが、勝利で終われて率直にうれしい」と安堵の表情を浮かべた。ノーサイド直後には、明大の先輩でもあるCTB廣瀬に抱きついて喜びを分かち合った。伊藤以外にもLOマイケル・ストーバーグ、PR大塚壮二郎らが初キャップを刻んでいる。


ディアンズ主将が明かす「あの日」との違い

ラマロ主将が「ハンドスキルも素晴らしく、ラインアウトでも良いプレーをしていた。キャプテンとしてチームを牽引し、ジャパンのアタックでもディフェンスでもキープレーヤーだった」と名指しで称えたのが、日本のキャプテン、LOワーナー・ディアンズだ。過去にイタリアへ大敗した試合との違いを問われたディアンズは、「あの時はセットピースでもブレイクダウンでもやられて、相手のプレッシャーに対応できなかった」と振り返った上で、「今日は自分たちでゲームをコントロールできた。9番10番のキックのタイミング、アタックに移るタイミングが良くて、ラインアウトディフェンスもスクラムもやられなかった」と胸を張った。前半終盤、自陣ゴール前でイタリアの猛攻を受けた場面については「あそこで止められたことが、自分たちにとってすごい自信になった」と述懐。たびたびボールを奪ったラインアウトディフェンスについては、「最初はプラン通りにやっていたが、途中でグラウンドに立つ選手たち自身で『もう少し変えよう』と話し合ってシステムを修正した」と、ピッチ上の選手主導の対応が奏功したことを明かした。

ノーサイドの瞬間にピッチへ倒れ込んだディアンズは、「スーパーラグビーは冬で、日本に戻って夏の試合をするのはすごくしんどかった。でも勝てて嬉しい気持ちで倒れた」と笑う。黒い喪章については、「エディーさんのお母様が亡くなったと聞いて、朝のミーティングでみんなの気持ちがまとまった。エディーさんのためというより、チームのためにみんなでいいプレーをしようと思った」と静かに語った。

会見の最後、ケサダHCは日本ラグビー界の温かいもてなしに謝意を述べたのち、「エディー・ジョーンズのお母様が亡くなったと聞いた。心よりお悔やみを申し上げる」と結んだ。


2年に一度開催されるネーションズチャンピオンシップに南半球グループの招待国として参戦する日本代表。次戦は7月11日、オーストラリア・ニューキャッスルのマクドナルド・ジョーンズ・スタジアムで世界ランキング3位のアイルランド代表と対戦する。8年ぶりの金星、そして敵将からの賛辞に沸いた日本代表だが、格上との連戦はまだ始まったばかりだ。

取材:Atsuhiko Nakai / SportsPressJP