2026年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカーにおいて、高校生年代最高峰のプレミアリーグWESTに所属する熊本県代表・大津高校は、前回大会準優勝、今大会もプレミアリーグ勢で唯一の4強入りという実績を引っさげて大会に臨んだ。
「勝つことでしか、熊本の人に勇気を届けられない」。そう語った渡部友翔主将(3年)。大会期間中の7月28日、故郷・熊本を大地震という未曾有の事態が襲う中、選手たちは最後まで諦めず、故郷への思いを胸に戦い抜いた。激闘の末、大津がたどり着いたのはベスト4(3位)だった。
7月31日の準決勝、大津は静岡学園に0-1で敗れ、決勝進出はならなかった。
「自分たちらしい戦いをやり切った」
準決勝、大津は立ち上がりから主導権を握った。開始4分にMF坂口凌空がシュートを放つもブロックされ、12分にはMF山本翼のシュートを静岡学園GK田邉匠真が好セーブ。決定機を作り続けながらも決めきれない展開となった。
後半6分、静岡学園MF安永龍生のクロスにFW坂本健悟が頭で合わせ、これが決勝点に。大津は途中出場のMF薮田尚大を投入して反撃を試みたが、及ばず0-1で敗れた。
山城朋大監督は試合後、「僕たちの今できることをしっかり頑張ろうと試合に臨みました」と振り返り、「残念な結果に終わりましたが、選手たちは自分たちらしい戦いを70分間、静岡学園さん相手にやり切ってくれた」と選手たちを称えた。「背負いすぎるということではないですが、本当に熊本を代表してということを改めて感じながら試合をすることができました」とも語り、「大会を通して自分たちらしさをさらに再確認しながら、高いレベルのサッカーを続けることができた。そこは誇りに思いたい」と続けた。
「他人事ではない」 地震の中での覚悟
今大会は大津にとって、単なるサッカーの大会以上の意味を持っていた。山城監督は「テレビ等で自分たちの地元の映像が何度も流れてくる中で、被害者の話であったり、どんどん情報が更新されていく中で、やっぱり選手たちは自分たちの地元が厳しい状況にあるということはすごく感じていました」と明かす。「だからこそ自分たちにできることは何かということは、選手たちの中ですごく具体的な決意を持って大会に臨んでくれた」。
震災の影響は、選手たちの身近にも及んでいた。「震災が起きて当初は被害はないという報告を受けていたんですけど、二次災害等でやはり部員の親戚が犠牲になられているという話も少し聞いています」と山城監督。「本当に他人事ではないということは、その話を聞いて感じています」と言葉を選びながら語った。
合志市出身の渡部主将は、小学生の時にも大きな地震を経験している。「小学生だったので、昔は全然できない環境でした。あまり無理はできない年齢でしたし、車でずっと過ごすような日々が続いていました」。当時は「お父さんから『机の中に隠れろ』と言われて机の中にいました。その後、もっと大きい地震が来るかもしれないということで、駐車場の車の中で待機する状況が続きました」という記憶を持つ。
「自分が小さい頃に経験した地震が、また10年後に起きていることにびっくりしています」。今回、自宅に残った父親には連絡を入れた。「大丈夫だから試合に集中しろ」と言ってもらえたことで、「自分たちがやれることはサッカーで結果を出すことだ」と思えたという。地震発生後、チームでは夕食のタイミングでミーティングを開いた。「こういう状況で自分たちがこの環境でサッカーをやれていることは当たり前じゃない」。一人一人がそう認識し、「本当に日本一を取ろう」と意志を固めたという。
福島からの支援、冬の「日本一」へ
宿泊先には、福島県広野町役場の職員が駆けつけた。山城監督は「役場の職員の方が宿泊所まで来ていただきまして、この備蓄品等が福島県で準備されてるということで、熊本に帰られる際にこう持ってくださいという風にわざわざホテルまで来ていただいて」と感謝を口にする。「色々な会場等でも声をかけていただいたりというのは、すごく励みになりました」。試合会場のスタンドには「ガンバロウ熊本」と書かれた横断幕も掲げられた。山城監督は「僕らはそういう話は聞いていなくて」としつつ、「僕らの想いを理解していただいた方が作っていただいたのだと思います」と話した。
3位に終わったが、大津の戦いは冬へと続く。渡部主将は「1点取った後、2点目、3点目という形がなかなか取れなかったことが今大会の課題」と冷静に振り返り、「冬は点取った後に2点目、3点目という形で失点0で勝てる試合をしたい。プレミアリーグや選手権で、必ず日本一を取れるように頑張っていきたい」と誓った。個人としても「チームを勝たせられる選手になれれば」と力を込めた。
山城監督も「やはり優勝を目指して臨んだ大会でした」としたうえで、「それ以上に、自分たちが積み上げてきた自分たちのスタイル、高校の伝統を彼ら3年生を中心にしっかり表現してくれた。そこは誇りに思いたい」とチームを評価。「この財産を持ち帰って、また熊本県でしっかり頑張りたい」と前を向いた。故郷への思いを力に変えた大津イレブンの「日本一」への挑戦は、冬へと続く。
Photo:Hiroshige Suzuki / SportsPressJP
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