田中こころ、劇的逆転 0.2秒の奇跡

三井不動産カップ2026(東京大会)第2戦、日本代表は韓国代表に78-77の1点差で競り勝った。第1クォーターを9-22の13点差で終えると、第2クォーターも及ばず35-45で前半を折り返し。第3クォーターも19-16と反撃したが54-61で終え、最大14点のビハインドを背負ったまま最終クォーターに入った。

そこから日本は息を吹き返す。第4クォーターは24-16と韓国を上回り、終盤は1点を争う攻防となった。試合を決めたのは20歳の司令塔、田中こころだ。チーム最多タイの18得点(3ポイント2/3、2ポイント5/11、フリースロー2/3)をマークし、大会MVPに輝いた。

激しいディフェンスにさらされる終盤の場面で笑顔を見せていたことを記者に問われ、田中はこう振り返った。「確かに笑っていた。1点差、2点差の緊迫した状況が自分にとっては楽しかった。相手とバチバチやり合える時間が楽しくて、それが自然と顔に出て笑顔になった」


コート上で何が見えていたのかという問いには、こう答えた。

「目の前の相手を絶対に倒したいという気持ちが強く、オフェンスの時はリングしか見えていないくらいずっとリングを見ていた。今日はシュートタッチも良かった。絶対に決めたいという強い気持ちがあった。歓声も上がって、これがバスケットの面白さだと実感した」


田中と並びチーム最多タイの18得点(リバウンド5)を挙げたのが、途中出場の馬瓜ステファニーだ。苦しい時間帯を個の力で支え続けた馬瓜は、勝利を喜びながらも表情を引き締めた。「この2日間で、自分たちのやりたいことをやり切れていない部分が見えてきた。今日の相手はランキングでは自分たちより下だが、ハッスルしてくる相手に対して最後まで勝てたのは良かった一方、こういう試合をしてしまうこと自体、もっとレベルの高い相手には苦しくなってしまう部分がある。この結果を受け止めて、本戦までにしっかり修正したい」

田中も、劇的な勝利の直前にあった自身のミスを含め、厳しい自己評価を口にした。

「あのシュートにつながる前の、もったいないミスが今日は多かった。ガードがボールをもらうタイミングが遅かったり、前に飛ばせるのに飛ばさなかったりして消極的になり、ミスにつながった部分があった。1本、2本かもしれないが、ワールドカップでは必ずその1本、2本が負けにつながる。本戦までにしっかり修正したい」


この日の田中の活躍は、指揮官コーリー・ゲインズHCの信頼と選考哲学に裏打ちされたものでもあった。ゲインズHCは選手選考の基準についてこう語る。「求めているのは特別なものを持っている選手だ。他の選手が持っていない、コーチとして教えられない特徴を持つ選手を求めている」


その具体例として名前を挙げたのが田中だった。1年前のWリーグでは所属チームでの出場時間が少なかった田中を、ゲインズHCは直感的に評価し、直後のアジアカップ日本代表に抜擢した経緯がある。そして今回、終盤の重要な場面でも、指揮官は田中への信頼を言葉にして示していた。試合終了間際のタイムアウトで、ゲインズHCは田中に「絶対にパスを回すな」「今は田中の番だ、自信を持て」と伝えたという。コーチの仕事は選手の自信を奪うことではなく与えることだとし、田中がシュートを放つ前から決まると確信していたと明かした。

大会全体では日本が2勝、韓国が2敗という結果に終わった。当日の観客動員は8,965人。ワールドカップのロスターは14名から3名が絞られ、WNBAで活躍する山本麻衣を加えた12名が正式メンバーとなる。田中や馬瓜の活躍も、この先のサバイバルの結果を左右する材料の一つになる。

女子日本代表はこの勝利を最後に国内での実戦を終え、9月4日開幕のFIBA女子バスケットボールワールドカップ2026(ドイツ・ベルリン)へ向かう。グループAではマリ、ドイツ、スペインと対戦する。


Photo by Junko Sato / SportsPressJP