出にくいね、と渡邊雄太は笑った

引力が入った夜。

8月31日、トヨタアリーナ東京。先発が11-0で走り、第1クォーターは29-11。ベンチの渡邊は、残り4分10秒まで出られなかった。

「スターターの5人がすごくいい入りをしてくれた。ベンチでも、これだけスタートがいいと出にくいねって話をしていた」

それでも流れは切れなかった。12得点。サウジ戦は日本で見ていた男が、ホームで戻ってきた夜だった。

「本当にプレーしていてめちゃくちゃ楽しい。強いチームってこういうチームだと思う」


123-70。後半だけで70点。桶谷大HCは「バスケットをやっていて、なかなか見たことない数字」と言った。出た選手は全員得点した。


「塁だったり河村が、その引力があって周りの点数が取りやすくなっている部分はある。とはいえ、それぞれの選手が役割を果たしたからこそ、こういうバスケットになった」

有明で八村が言った「ケミストリーを崩さない」。指揮官はそれを、八村と河村の「引力」という言葉で語り直していた。


Window4は2連勝で終わった。アウェーのサウジも、同じ勝ち方だった。相手は格下だ。勝敗を驚きとして書く夜ではない。残ったのは、勝ち方だった。


サウジの夜、渡邊はいなかった。それでも桶谷は「思い描いていたようなバスケットができた」と言った。カタール戦で渡邊が戻っても、崩れなかった。最強布陣は、先発5人の話ではなかった。


桶谷は、コートに立てなかった名前も置いた。富樫のリーダーシップ。出られなかった川島が、若手なりにやるべきことをやろうとしていたこと。渡邊はそれを「一つのページ」と呼んだ。

「みんなが、コーチ陣含めて一つのページになれてたからこそ、いい雰囲気が生まれた」


11月はアウェーのレバノンとカタール。八村と河村はいない予定だ。桶谷は「2人がいなくなって、それこそ僕たちの真価が問われる」と言った。渡邊は「彼らが残してくれた、日本が強いという自信は継続しつつ、いなくても強い日本代表を見せられるように頑張る」と返した。


有明のえぐさは、公式戦でもチームに入った。次に問われるのは、その引力が、2人がいなくても残るかどうかだ。


Photo by Junko Sato / SportsPressJP

Text by Tomoyuki Nishikawa / SportsPressJP 

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