愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会は22日、愛知国際アリーナで行われた車いすバスケットボール女子3位決定戦で、AIが自動生成したハイライト映像を会場の大型モニターに投影した。撮影から編集までをAIが担う観戦サービスは、アジアパラ競技大会で初めての試み。
無人カメラと「状況を理解する」AI
仕組みの柱は2つのAIだ。ひとつはAIカメラ。固定された三眼カメラがコート全体を広角で撮影し、内部処理で選手やボールを認識する。カメラ自体は動かないが、ボールを追いかけているかのような映像を出力できる。観客席の手すりなどに簡単に固定できるのも特徴だ。
もうひとつが視覚言語モデル(VLM)。従来の画像認識AIが「ボール」「車いす」「人」を個別に見分けるのに対し、VLMはスコアボードの残り時間も含めて画面全体の状況を理解する。「第4クォーター残り30秒、逆転の3ポイント」といった文脈を捉え、見どころを抽出する。観客の歓声や拍手、ブザー、MCの声も解析し、会場の盛り上がりを判断材料に加える。
組織委員会によると、第2クォーター終了直前までの映像を解析し、ハーフタイム開始から3分弱で約2分のハイライトが完成する。場面転換の映像効果も自動で挿入される。ハーフタイムでの投影は女子・男子の3位決定戦と決勝の計4試合で、撮影とデータ記録は全試合で行う。
完成度は想像以上
実際に投影された映像は、得点シーンや競り合いがテンポよくつながり、想像していた以上の完成度だった。会場の大型モニターで見る限り、人の手で編集した映像と比べて違和感は少ない。
精度は「得点90%超、アシスト70%」
AIは競技データの解析も担う。事前に選手名と背番号を登録しておくと、映像から各選手の得点や反則などのスタッツを自動生成する。背番号が見えた時点で選手を識別し、一時的に隠れても同一選手として追い続ける。データは試合翌日以降、各国代表チームやレフリー、競技団体にウェブ上で提供される。スタッツの項目をクリックすると、該当する場面の映像が再生される仕組みだ。
組織委員会によると、初日7試合での検証では、得点やブロックは公式記録との一致率が90%を超えた。一方、スチールやアシスト、ターンオーバーは約70%にとどまる。公式スタッツとの乖離もあるため、あくまで参考情報との位置付けで、フィードバックを受けて精度の向上を図る。
狙いは「スポーツ映像の民主化」
テレコムグループ担当課長の豊吉氏は、現状ではプロが作るハイライトの方が優れる面があると認めたうえで、「人手が回らないアマチュアやジュニア、マイナースポーツにこの技術を広げたい」と語った。予算の限られた競技でも、カメラ1台とAIでハーフタイムに楽しめる映像を作れることが最大の強みだという。
メインアリーナにはAIカメラが常設されていないため、今回は仮設で導入した。大規模な改修なしで設置できることも確認できたとして、松波情報システム課長は「愛知県内の既存施設や老朽化した施設への横展開モデルとして発信していきたい」と話した。
Illustrative photo (not the AI highlight) by Junko Sato / SportsPressJP
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