敗れても、顔は上がっていた。120分間の死闘の果てに待っていたのは、残酷なPK戦という結末だった。しかし、ピッチに立つRB大宮アルディージャWOMENの選手たちの顔は、決して下を向いていなかった。クラブ創設以来初となるタイトルをかけた決勝の舞台で、彼女たちは120分間——ただ守りに入るのではなく、果敢にゴールを奪いに行くという強い意志を証明し続けた。
西尾葉音の一撃
試合開始わずか3分。西尾葉音が自らの足で強烈なシュートを放ち、先制のネットを揺らした瞬間、スタジアムの空気は一変した。「今季の成長の証だった」——試合後、柳井里奈監督はその場面を目を細めながら振り返った。しかしその後、強豪ベレーザのパスワークが猛威を振るい始める。押し込まれる時間が続き、同点に追いつかれ、延長戦では勝ち越しゴールまで許す苦しい展開。それでも、選手たちの心は折れていなかった。
延長後半、阪口萌乃の執念
疲労が限界に達する延長後半。岩下綺良々のクロスに飛び込んだのは、ベテランの阪口萌乃だった。身を投げ出した渾身のヘディングがネットに突き刺さり、スタジアムは最高潮の熱狂に包まれた。ギリギリPK戦に持ち込むだけではない——ゴールを奪いにいくという意思を、チームは極限状態の中でも貫いてみせた。PK戦では相手GK大場朱羽の好セーブに阻まれ、あと一歩で栄冠には届かなかった。しかしその戦いぶりは、観る者の心を激しく揺さぶるものだった。
柳井監督「勝たせてあげられなかったのは私の力不足」
試合後の会見。柳井里奈監督はまず、120分間自分たちのスタイルを貫き通してくれた選手たちへ、深い感謝の言葉を口にした。そして、悔しさをにじませながら続けた。「後手を踏んだのは選手の問題ではなく、自分の力不足。あと一歩のところで勝たせてあげられなかった。ターンオーバーなしで決勝まで追いかけるという選択をしたのは自分であり、その決断についてきてくれた選手たちをねぎらいたい」
勝敗を分けたのはベレーザの楠瀬監督との能力の差だったと、指揮官は真摯に認めた。指導者としての覚悟が、その言葉一つひとつから滲み出ていた。
「胸を張れ」——顔を上げた選手たち
セレモニー前、柳井監督は選手たちにこう語りかけた。「積み上げてきたスタイルで戦い抜いた。胸を張って良い表情で臨もう」。その言葉通り、選手たちは凛と顔を上げて整列した。
「準優勝という結果の価値は、これからの自分たちの行動次第。この結果を偶然と言わせないために、エンブレムに星を刻むことを目指して、もう一度スタイルを磨いていきます」
顔を上げた選手たちの表情には、次こそ必ず——という強い決意が満ち溢れていた。
1万2000人と、クラブの歴史
この日、Jリーグの試合と重なる日程でありながら、スタジアムには1万2000人を超える大観衆が詰めかけた。女子サッカーを長年牽引してきた先人たちの功績であり、その熱を若手・中堅選手たちがピッチで引き継いだ結果だった。アウェイ出発の際には男子チームのスタッフや選手が送り出してくれた。「男子・女子の比較ではなく、RB大宮アルディージャというひとつのクラブとして決勝を戦えたことが重要だった」と柳井監督は語った。
敗れはしたが、間違いなく彼女たちはクラブの歴史を少し前に動かした。逃げずに挑み続けたその姿は、これからの女子サッカーの未来を照らす希望そのものだった。
取材:Junko Sato / SportsPressJP
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