【W杯2026 準々決勝プレビュー】イングランドvsノルウェー

FIFAワールドカップ2026の準々決勝で、イングランド代表とノルウェー代表が対戦する。試合は現地時間7月11日17時、マイアミ・スタジアム(NFLマイアミ・ドルフィンズの本拠地)でキックオフ。日本時間では7月12日午前6時にあたる。勝者は準決勝でアルゼンチンかスイスと対戦する。


ここまでの道のり

イングランドはラウンド32でDRコンゴを2-1、ラウンド16ではメキシコを3-2で下してこの準々決勝に進んだ。メキシコ戦ではベリンガムが2分間で2得点、後半にケインがPKを決めて逆転勝ち。一方でクアンサーが退場となり、2試合の出場停止処分を受けている。イングランドは過去10度の準々決勝進出のうち突破はわずか3度、7度は2失点以上を喫しており、国内では「また準々決勝止まりか」という不安の声も根強い。


ノルウェーは1998年大会以来28年ぶりのワールドカップ出場で、自国史上初めて準々決勝に到達した。過去2度の欧州勢とのノックアウトラウンドは、1938年・1998年ともにイタリアに敗れており、それを超える大会最高成績だ。ラウンド32でコートジボワールを2-1、ラウンド16では強豪ブラジルを2-1で撃破。ブラジル相手には過去5戦負けなしという記録も持つ。


直前会見 トゥヘル監督「全員起用可能」、ケインは負傷者ゼロを歓迎

試合前日の記者会見で、トーマス・トゥヘル監督は「全員がトレーニングに参加できた。それが一番のニュースだ。出場停止のクアンサーを除いて、フルメンバーから選べる」と明かした。デクラン・ライス(体調不良)、マルク・ゲイ、リース・ジェームズ(ともにハムストリング)はいずれも金曜日の全体練習に復帰しており、選考に含まれる。一方でジョーダン・ヘンダーソンは今大会での復帰が見込めない。メキシコ戦の勝利後、ファンと「ワンダーウォール」を合唱していた際に広告ボードを飛び越えようとして転倒し、腕を骨折して手術を受けていた。


キャプテンのケインについて問われたトゥヘル監督は「彼について語る言葉が尽きるほどだ。彼が我々のために試合を決めてくれる。リーダーであり、キャプテンとして背中で示してくれる。キャリアの最高潮の状態にあり、それがチームの大きな助けになっている」と手放しで評価した。


ケイン、ハーランドとの一騎打ちには「比較するものではない」

会見終盤、両エースの直接対決について問われたケインは「答えるのは不可能だ」と前置きしつつ、「僕たちは正直まったく違うタイプの選手だ。同じストライカーと見られているけど、ポジションもほぼ違う」と説明。「アーリングは信じられない選手だ。フィジカルはマシーンで、獣のようだ。フィニッシュは最高レベルで、得点記録がすべてを物語っている」とハーランドを称えた一方、「僕は少しボールに関わってプレーするタイプの、違う選手だと思っている」と自身のスタイルとの違いを語った。


明日の相手については「本当に危険なチームで、素晴らしい選手が揃っている。ボールを持っている時も、持っていない時もよく訓練されている」とし、「彼らの構造の弱点を見つけるのが僕たちの仕事。自分たちのゲームを展開したい。彼らは勢いに乗って自由にプレーしてくると思うので、その流れをこちらに引き寄せなければいけない。厳しい試合になると思う」と警戒感を示した。


デビッド・ベッカムがイングランドの練習拠点(ベッカムが所有するインテル・マイアミの施設)を訪れたことについては「彼はただ幸運を祈ってくれただけ。ほとんどの試合の後にメッセージをくれるし、連絡を取り合っている。彼は大のイングランドファンだからね」と明かした。


数字が語る両エース

ケインは今大会すでに6得点。イングランド選手が主要大会で6得点に到達したのは、1986年大会のゲーリー・リネカー、そして2018年大会の自分自身に次いで史上3人目となる。直近12戦のノックアウトラウンドでは11得点を記録している。


対するハーランドは今大会すでに7得点。代表での直近14試合連続得点中(この間27得点)で、出場したすべての試合でゴールを記録している。ゴールキーパーのジョーダン・ピックフォードは、プレミアリーグでハーランドから受けた枠内シュート10本のうち7本を許しており、両者の対戦成績はハーランド優位。なお、ピックフォードは今大会でシルトンと並ぶイングランド歴代最多出場に並ぶ見込みで、記録づくめの一戦でもある。


ソルバッケン監督「ハーランド対ケインではなく、ノルウェー対イングランドだ」

一方のノルウェーも、試合前日にストーレ・ソルバッケン監督が単独で会見に臨んだ。「ケインとハーランドの一騎打ちになるか」と問われた監督は「ノルウェー対イングランドだと思う。ただ、ケインがイングランドのマッチウィナー、ハーランドが我々のマッチウィナーだというのは秘密でも何でもない」とストライカー対決という構図に距離を置いた。今大会無失点勝利がまだない点を指摘されると「ブラジル戦では無失点勝利まで残り10秒だった。油断はしないほうがいい」と守備への自信ものぞかせた。


ハーランドの得点への飢餓感を問われた場面では、率直な一面も見せている。「正直に言うと、練習ではそこまでの飢餓感はない。集中できている練習もあるが、そうでない練習もある。そこは正直に言わないといけない」と明かした一方、控えのアレクサンダー・セルロートについては「ロングボールを収める役割でハーランドの負担を減らしてくれている。彼が体を張って相手をぶつかり合ってくれるおかげで、他の選手にスペースができる。彼のフィジカルな存在感はチームにとって非常に大きい」と評価した。


チームの雰囲気については「全員健康で調子がいい。合宿生活の停滞感もまったくない」とし、「リラックスしながらも競争心を保てている、いいバランスだと思う。プレッシャーを感じないと最高の状態では戦えないので、多少のプレッシャーは感じているはずだ」と語った。イングランドとのプレッシャーの比較では「我々よりもイングランドの方がプレッシャーは大きいと思う。とはいえ試合が始まれば、選手たちはプレッシャーのことなどそれほど考えていないはずだ」とも述べた。


延長・PK戦になった場合への備えも問われ、「PK戦の準備はかなりしっかりしてきた。誰がどの順番で蹴るかも決めてある。ただ、ここまでの大会のPK戦は決して褒められた内容ではなかった。プレッシャーが絡む話なので、自分たちがどう反応するかも分からないが、明日PK戦になる可能性は十分にある」と率直に語った。


個人的なイングランドへの思い入れも明かした。「W杯史上一番悔やんでいるのは、1982年にケビン・キーガンが途中出場でスペイン戦のチャンスを外したことだ。彼は僕のヒーローだった」とし、「英国サッカーを追いかけてきた人は誰でも贔屓のチームや選手がいるはずで、それが明日を少し特別なものにしている。僕が応援していたのはリバプールだったが、キーガンは僕の男だった」と、少年時代からの英国サッカーへの愛着を語った。

キックオフは日本時間7月12日午前6時。

TEXT:Tomoyuki Nishikawa(SportsPressJP)