FIFAワールドカップ2026は現地時間7月11日、マイアミ・スタジアムで準々決勝ノルウェー対イングランドを行い、イングランドが延長の末に2-1で勝利した。試合前日の会見でストーレ・ソルバッケン監督は両エースの直接対決という構図について「ハーランド対ケインではなく、ノルウェー対イングランドだと思う」と語っていたが、その言葉通り、勝敗を分けたのはどちらのストライカーでもなくジュード・ベリンガムだった。同点弾と決勝弾を挙げたベリンガムについて、トーマス・トゥヘル監督は試合後の会見で「絶対的なトップクラス。大舞台でのワールドクラスのパフォーマンスだ」と手放しで称えている。
ワイヤーへの接触が疑われたイングランドの同点弾をめぐっては、両監督の受け止め方に温度差があった。ソルバッケン監督は「ボールが空から真っ直ぐ落ちてきた」「ベンチにいた選手全員が瞬間的に反応した」と繰り返し、「エルヤン(GK)も、ボールを受けようとしていた選手も含めて、みんな何かに触れたと感じていたはずだ」と主張した。ただし「これは言い訳ではない。今日はほとんどの運が我々に味方しなかった、それだけのことだ」とも述べ、判定そのものへの深追いは避けた。ボール内蔵チップの検知範囲について、地上レベルの接触しか捉えられないのではという記者の指摘には「それは腑に落ちる説明だ」と応じている。
一方のトゥヘル監督は、この場面について問われると「ボールに毛一本触れても分かるチップがあるはずだから、その点はFIFAに聞けば分かるだろう。自分は見ていなかったし、知らなかった」としたうえで、「その場面を含めて、我々は決定的な瞬間に運が良かったと思う。ノーゴールで2点ビハインドになる大きなミスもあったし、終盤には主審がゴールを取り消してくれる幸運もあった。運が要ることを認めるのに何の問題もない」と率直に語った。同じ一件に対し、ノルウェー側は疑義を残しながらも矛を収め、イングランド側は結果への幸運として素直に認める、対照的な構図になった。
前日会見の伏線という点では、ライスの状態をめぐるくだりが興味深い。トゥヘル監督は試合前日、「デクラン・ライスはハムストリングの張りがあったが、金曜日の全体練習に復帰した」と述べ、フルメンバーからの選考が可能だと明かしていた。しかし試合後の会見では、ハーフタイムでの交代判断について問われ、「ライスは直近3日間、ほとんどベッドで過ごしていた。90分持たないのは分かっていたので、後半に取っておくのはもったいないと判断し、早めに交代させて延長に備えた選手交代を温存する狙いもあった」と明かしている。前日の「トレーニングに戻った」という言葉の裏にあった実際の消耗度が、試合後になって初めて具体的に語られた形だ。
ハーランドの交代についても両監督から言及があった。ソルバッケン監督自身は「105分での交代は遅すぎたのでは、10分前でも良かったのでは」という質問に対し、「大腿部にデッドレッグを負っていたこともあり、疲労が重なった。それでも彼は5試合で7得点、大会を通じて素晴らしい活躍をしてくれた」と説明。プレビュー会見でケインが「アーリングはマシーンだ、フィジカルは獣のようだ」と称えていた強さについて、トゥヘル監督は今回、自軍の守備陣の働きとして語っている。「今日は中央の両センターバックが本当に良かった。ボールが渡らない瞬間でもハーランドに常につきまとい、フィジカルに、勇敢に、強く戦ってくれた」。プレビューで語られたハーランドの脅威が、試合後には「抑え込んだ相手」として振り返られる回収になった。
戦術面では、ベリンガムのポジション変遷についてトゥヘル監督が詳しく説明している。「シュートは右の10番でスタートし、ハーフタイムの交代で左の8番寄りに動かした。ただそれだと少し低い位置になってしまい、できるだけ高い位置に置きたい自分としては理想的ではなかった」とし、その後の選手交代に伴ってライス、エリオット・アンダーソン、モーガン・ロジャーズらのポジションを連鎖的に組み替えていった経緯を語った。攻撃の骨格については「攻撃の方程式はシンプルだ。ハリーとジュードを組ませれば、あとは彼らがやってくれる」と言い切っている。新しいポジションで奮闘したロジャーズについても「彼は望むような役割をそのままはできなかったかもしれないが、今日は彼にとって大きな一歩だった」と評価した。
延長でもPK戦は使われずに終わった。ソルバッケン監督は前日会見で「PK戦の準備はかなりしっかりしてきた。誰がどの順番で蹴るかも決めてある」と語っていたが、ベリンガムの延長前半の決勝弾によってその備えが披露されることはなかった。
大会全体の総括として、ソルバッケン監督は「選手たちは大会を通じて驚異的だった。28年ぶりにW杯に戻り、ただの予選通過チームではなく、トーナメントを戦い抜くチームになれた。このチームを本当に誇りに思う」と語り、同国史上初となるベスト8進出を果たした選手たちを力強くねぎらった。無失点勝利がないままの敗退となったが、その点への言及はなく、あくまでチームとしての成長に焦点を当てた総括だった。
対するトゥヘル監督は、勝者でありながら手放しでは喜ばなかった。「選手たちが見せたシフト、粘り強さ、逆境を乗り越える力については文句のつけようがない。ただ自分はサッカーの指導者でもある。今日は決して高いレベルの試合ではなかったし、我々はもっと上手くプレーできるはずだ。雑なプレーや多くの技術的なミスがあり、それが我々から確信を奪う場面もあった」と自己評価を語り、次の準決勝に向けて課題を残したままの勝利であることを強調した。
イングランドは15日の準決勝でアルゼンチンと対戦する。28年ぶりの出場で自国史上最高のベスト8進出を果たしたノルウェーの挑戦は、ここマイアミで幕を閉じた。
by SportsPressJP
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