男子テニスの元世界ランキング4位、錦織圭(ユニクロ)の引退セレモニーが10月6日、木下グループジャパンオープン最終日の有明コロシアムで行われた。19年間のプロ生活を終えた錦織は、支えてくれた人たちへの感謝を語り、「必ず何か戻ってきて何かはします」と次のステージへの思いを口にした。
錦織はまず、13歳での渡米を支援した盛田正明会長をはじめ、関係者への感謝を述べた。「自分がトップ10、トップ5に入ることができたのも、本当に周りのサポートがあってこそ」。
続けて家族に触れた。自分の趣味をすべて捨てて公園でのテニスに付き合ってくれた父、父に怒られたときに陰で支えてくれた母。そして姉には、受験勉強中に隣の部屋から壁を叩いて邪魔をしたことを打ち明け、「最初のライバルとしてお姉ちゃんが引っ張ってくれたのは、今の僕のキャリアにすごく大事な時間だった。あの時はすいませんでした」と謝り、会場を和ませた。
5歳でラケットを握り、小学生の頃から「グランドスラムを取りたい、1位になりたい」という夢を追い続けた。アカデミーで同じトップグループにいた選手たちが次々とテニスをやめていく姿も見てきたという。「悔いもたくさん残っています。結果ももうちょっと出したかった。国枝さんみたいに金メダルやグランドスラムを取りまくることはできなかったですけど、すごく楽しいテニス人生を送れました」。
今後については「まずはちょっと休ませてくださいね」と笑顔を見せたうえで、「日本テニス、アジアのテニスがもっと強くなるように、微力ながら力になりたい」と語った。
セレモニー後、元コーチのマイケル・チャン氏とダンテ・ボティーニ氏が取材に応じた。
2013年12月から指導したチャン氏は、当時の錦織について「世界15、16位あたりで、トップ10の目前にいた」と振り返る。トップへの道に「秘密のレシピはない」とし、「ハードワークと、素晴らしいチームに囲まれること。自分ひとりでできると言う選手はいない」と、錦織を支えた体制の大きさを強調した。
最も印象に残る場面には、ジャパンオープン優勝と2014年全米オープン準決勝のジョコビッチ戦を挙げた。ラオニッチ、ワウリンカとの2試合連続のフルセットを勝ち抜いた後にもかかわらず、「第4セットで疲れていたのはノバクの方だった」。メンフィスでの4連覇やバルセロナでの優勝にも触れ、「本当に楽しかった」と語った。
錦織をより長く指導してきたボティーニ氏は、代名詞のバックハンドを「世界最高と言い切れなくても、トップ3には入る」と評価。打点の早さとクリーンな当たりを挙げつつ、「私が見始めたときにはもう持っていた」と才能を認めた。そのうえで特に称えたのが吸収力の高さだ。「これをやろうと伝えるとすぐに取り入れる。ほかの選手には決して伝わらないこともあるが、ケイは本当に早かった」。
ボティーニ氏によると、錦織は今後について「今は何も考えていない」と話したという。同氏は「それでいい。家でゆっくり家族と過ごせばいい」としたうえで、「テニスに関わり続けると思う。人に教えることを楽しんでいるから」と予想した。
チャン氏は、自身の子どもたちと接する錦織の姿を長年見てきた立場から、こう締めくくった。「彼は素晴らしい父親になる。選手としてのキャリアも見事だったが、人生の第二章では、もっと大きな充実と意味を見つけるはずだ」。
Photo by Junko Sato / SportsPressJP
0コメント