FAカップに宿る「ジャイアントキリングのロマン」

150年の歴史と国技の交差点
~新大関・安青錦が触れた「FAカップ」とジャイアントキリングの真髄~


2026年3月30日、大阪の安治川部屋・松原宿舎において、世界最古のサッカー大会であるエミレーツFAカップの日本初となるオフィシャルトロフィーツアー「東京テイクオーバー」の特別クロススポーツイベントが開催された 。1871年に創設されたイングランドの伝統あるサッカー大会と、日本の国技である相撲という、二つの異なる文化が融合する歴史的な機会となった 。

登壇者には、ウクライナ出身で史上最速で大関に昇進し、1月場所で新大関として優勝を果たした安治川部屋所属の安青錦関が迎えられた 。FAカップトロフィーツアー担当として、イギリスを拠点に世界的なスポーツ界の最前線で活動するトッププレゼンターのオリビア・ブザグロ氏と、元プロサッカー選手のダニエル・エンティー氏が参加した 。


FAカップの熱狂を知るプロフェッショナルたち

オリビア・ブザグロ氏は、大学でメディアの学位を取得した後、プレミアリーグ・プロダクションズに試合のデータを入力するロガーとして入社し、そこから約3年間の裏方業務を経てプレゼンターへと昇格した苦労人。彼女の父親であるティム・ブザグロ氏は、1991年のFAカップで格上のチームを相手にハットトリックを決め、歴史的なジャイアントキリングを達成した伝説的な選手であり、彼女自身もストライカーとして39試合で45ゴールを記録した経験を持つなど、FAカップとサッカーに対する深い愛情と情熱を背景に持っている。現在はTNT SportsやSky Sportsなどで活躍し、自身も熱狂的なチェルシーファンであることを公言しながら、深い専門知識をもとに現代のサッカーメディアにおいて強い影響力を持つ人物へと成長を遂げている 。

一方のダニエル・エンティー氏は、ウスター・シティFCなどでフォワードやミッドフィールダーとして活躍した経歴を持ち、2014年のFAカップでは格上のコベントリー・シティFCを相手にジャイアントキリングを達成し、続くスカンソープ・ユナイテッド戦でも自ら同点ゴールを決めるなど大会に名を残した元選手であった 。引退後はサッカー、ファッション、音楽を繋ぐカルチャーアイコンとして多方面で活動し、イングランドサッカー協会の公式YouTubeチャンネルで司会を務めるなどの経歴を持っている 。


ウクライナ出身の新大関が語る「ジャイアントキリング」のロマン

イベントの冒頭では、FAカップのオフィシャルトロフィーと、日本の大相撲における最高峰の証である天皇賜杯のレプリカが並べられ、二つのトロフィーを交換して手にするという特別なフォトセッションが行われた 。安青錦関はFAカップのトロフィーを手にした際、非常に重みを感じ、自分が触れてよいものかという畏れ多い気持ちと強い感動を覚えたと口にした 。

対談では、安青錦関は母国ウクライナにいた子供の頃からサッカーに親しんでおり、ポジションのこだわりは特になかったものの、自身がゴールを決めるよりも味方へアシストを出すことが好きであったと明かした 。マンチェスター・ユナイテッドのファンである安青錦関は、ウェイン・ルーニー選手やクリスティアーノ・ロナウド選手、さらにはチェルシーのミハイロ・ムドリク選手(同郷ウクライナ出身)を応援していたと語った 。

ダニエル・エンティー氏やオリビア・ブザグロ氏からの質問に答える形で、安青錦関はFAカップ最大の魅力である格下チームが強豪を打ち破る「ジャイアントキリング」と相撲の共通点について言及 。体が一番大きい人や常に一番強い人が勝つわけではないという予測不可能な面白さが両競技に共通していると語り、ジャンルを越えた深いつながりを見せていた 。


三笘薫からのエールと、過酷な相撲体験

対談の中盤には、イングランドのプレミアリーグ・ブライトンで活躍する日本代表の三笘薫選手からのサプライズビデオメッセージと、直筆サイン入りユニフォームが贈呈された 。安青錦関は予想外のプレゼントに大変驚き、三笘選手からの「お互いに頑張りましょう」というメッセージに対して力強い喜びを見せ、今後も応援し続ける姿勢を示した 。

イベントの後半には、ダニエル・エンティー氏がまわしを締め、安青錦関の指導のもと、相撲の基本動作を実際に体験する特別なプログラムが実施された 。ダニエル氏は最初、恥をかかないようにという思いと相撲が取れることへのワクワク感を抱いていたが、基本の四股から始め、特有のスクワット動作(腰割り)、さらには激しいぶつかり稽古をこなし、見た目以上にハードな内容に大粒の汗を流していた 。

安青錦関はその動きの良さを褒め称え、スカウトしたいと冗談を交えるなど、和やかな雰囲気の中で異文化交流が深められた 。オリビア・ブザグロ氏もそのハードな稽古の様子を見て、自分が体験しなくてよかったと安堵の言葉を漏らしていた 。


初の挫折、そしてカド番へ。異文化交流を糧に再び土俵へ

安青錦関は、2026年3月の春場所において千秋楽で豊昇龍に敗れ、初土俵以来継続していた連続勝ち越し記録がストップし、初めての負け越しを経験した 。大関としてカド番で迎えることとなる5月の夏場所に向けて、安青錦関は「強い安青錦を見せたい」と力強い決意を語った 。今回のイベントは、異なる競技のプロフェッショナルたちとの交流を通じ、安青錦関にとって新たな刺激を受ける貴重な機会となった。


「エミレーツFAカップ:東京テイクオーバー」は、エミレーツ航空のサポートのもと、日本のファンとの結びつきを深める目的で企画された 。日本のサッカー文化とイングランドの伝統を繋ぐ多彩な取り組みは4月5日まで続く 。エミレーツ航空はサッカーのみならず、ラグビー、テニス、モータースポーツなど幅広いスポーツや文化イベントへのスポンサーシップを継続しており、今回のツアーもそのグローバルなコミュニティ活動の一環として位置付けられている 。


取材:Tomoyuki Nishikawa / SportsPressJP 

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